ピルとは
ピルとは、経口避妊薬(OC)のことでエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を配合した薬です。もっともよく知られている効果は避妊ですが、避妊以外にも月経周期の安定・月軽量の減少・月経痛の軽減などの効果もあります。
月経困難症や子宮内膜症などの治療薬も基本的には経口避妊薬(OC)と同様の成分でピルとも呼ばれますが、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)として区別されています。含まれるホルモン量によって、中用量・低用量・超低用量(LEPのみ)ピルに分類され、経口避妊薬(OC)には一般的に低用量のものが用いられています。
当院でも、中用量・低用量・超低用量ピルを取り扱ったピル専門外来を開設しております。
患者様の目的に応じた処方をいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。
・経口避妊薬(OC):避妊を目的、自費診療
・エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP):治療を目的、保険診療
※超低用量ピル:日本では避妊を目的とした使用が認められていません。
ピルの種類と特徴
一相性
ホルモン含有量が一定になっている。
マーベロン、ファボワールなど 同じ錠剤を服用するので、順序の間違いは少ない。
三相性
ホルモン含有量が自然のホルモン分泌に合わせ調節してある。
トリキュラー、ラベルフィーユ、アンジュなど 不正出血などの副作用の頻度が少ない。
定められた順序で服用しないと避妊効果は得られない。
21錠タイプ(7日間の休薬期間あり)
21日間服用・7日間休薬。
28錠タイプ(休薬期間なし)
28日間服用。
※飲み忘れがないように4列目は偽薬(プラセボ)。
ピルの服用方法
1シート目
最初の1シート目のみ月経1日目から開始、毎日同じ時間に1日1錠服用します。
※2~3時間の程度のズレであれば問題ありません。
2シート目
21錠タイプ
7日間の休薬期間が終わってから2シート目の1錠目を服用します。
28錠タイプ
1シート目の28錠すべて服用してから2シート目の1錠目を服用します。
これを周期的に繰り返します。
ピルの効果
ピルの服用により、以下のようなさまざまな効果が期待できます。
避妊
適切なピルの使用により排卵が抑制され、99%以上と高い避妊効果が得られます。
適切に服用すれば、開始後1年以内に妊娠してしまう確率は0.3%となります。
ただし、性感染症の予防のためには、コンドームの併用が必要です。
一般的に、服用中止後3か月以内に排卵が回復して自然月経が再開します。
月経困難症・過多月経の症状軽減
排卵が抑制されることで、強い下腹部痛や腰痛などを伴う月経困難症の症状を軽減します。
子宮内膜が薄くなることで月経量が少なくなります。
※まれに月経がみられなくことがあります。この場合、妊娠の有無をまず確認します。妊娠が除外された場合は、月経がなくても服用を継続します。
月経前症候群(PMS)の症状軽減
女性ホルモンのバランスの変動を抑えることで、月経の3~10日前に生じる気分の落ち込み・イライラ・嘔吐・頭痛などを伴う体調不良を軽減します。
肌荒れ、ニキビの改善
テストステロンという男性ホルモンの分泌が抑えられることから、肌荒れやニキビといった肌トラブルの改善が期待できます。
※ピルの中でもマーベロン・ファボワールが効果的です。
卵巣がん、子宮体がんの発症リスク低減
卵巣がん、子宮体がんの発症リスクを低減させることが分かっています。
月経不順の改善
月経周期が安定します。
ピルの分類
エストロゲンの量(1錠あたり) | |
中用量 :プラノバール | 50μg |
低用量 :避妊用ピル(OC)、治療用ピル(LEP) | 30~40μg |
超低用量:治療用ピル(LEP)のみ | 20μg |
※超低用量:ヤーズ、ヤーズフレックス、ルナベルULD、ジェミーナ、ドロエチ
ピルのメリットとデメリット
メリット
高い避妊効果が得られることはよく知られていますが、それ以外にもさまざまなメリットがあります。
女性主体の高い避妊効果が得られる
99%以上の高い避妊効果が得られます。また、基本的に男性が主体になるコンドームとは異なり、女性が主体となって行う避妊であるという点も大きなメリットです。
月経量の減少、月経痛の軽減
月経困難症や月経前症候群(PMS)の症状が軽減され、日常生活における不快感が和らぎます。
また、月経量の減少により貧血の改善も期待できます。
月経周期の安定
月経周期が安定することで、仕事や旅行などのスケジュールもたてやすくなります。
肌トラブルの改善
男性ホルモンであるテストステロンの分泌が抑制されることで、肌荒れやニキビといった肌トラブルの改善が期待できます。
※ピルの中でもマーベロン・ファボワールが効果的です。
卵巣がん、子宮体がんなどの発症リスク低減
卵巣がん、子宮体がんといった婦人科がん、また大腸がんの発症リスクを低減します。
デメリット
当院では、デメリットについてもきちんと把握していただいた上で、適切にピルを処方いたします。
毎日の服用が必要
十分な効果を得るためには、飲み忘れなく毎日決まった時刻に服用することが重要です。
副作用のリスク
吐き気やむかつき、頭痛、不正出血、むくみ、乳房の張りなどの副作用が起こることがあります。こういったマイナートラブルは、服用開始から1~2シート目に起こりやすくなりますが3シート目ぐらいから軽減することが多いです。
また、大きな副作用として血栓症(下肢の深部静脈血栓症・肺塞栓症、脳梗塞、心筋梗塞)のリスクが指摘されています。ただし、血栓症を発症するのは1万人あたり3~9人、そのうち重症化するのが100人に1人程度と、その確率はかなり低くなっています。開始後4カ月以内に多く認められます。
※下肢の深部静脈血栓症・肺塞栓症とはいわゆる「飛行機のエコノミークラス症候群」のことです。
服用できないケース(禁忌)がある
50歳以上または閉経後、35歳以上で1日15本以上の喫煙をする方、血栓性素因・既往のある方、重度の高血圧の方、妊娠中・授乳中の方、乳がんの方などには、ピルを処方することができません。また前兆(目がチカチカしてギザギザした光がみえるなど)を伴う片頭痛の方にも処方することができません。
慎重投与:40歳以上、BMI30以上、喫煙者、軽症の高血圧(妊娠中の高血圧の既往も含む)、片頭痛など。
医師の診察が必要
医師の診察の上、処方を受ける必要があります。
ピル飲み忘れの対処方法
ピルは、1日1錠、毎日決まった時刻に服用します。
もしピルを飲み忘れてしまったときには、以下のように適切に対処することが大切です。もし少しでもご不安があるようでしたら、状況を整理し、すぐに当院にお電話ください。
1回の飲み忘れの場合
(当日あるいは翌日の服用時刻前に気付いた時)
その時点ですぐに飲み忘れた分の1錠を飲みましょう。その後は予定通りお飲み下さい。
(翌日の服用時刻に気付いた時)
飲み忘れた昨日の分の1錠と合わせて2錠を飲みましょう。その後は予定通りお飲み下さい。
原則としてアフターピル(緊急避妊ピル)は必要ありません。
2回以上の飲み忘れの場合
2日以上飲み忘れた場合は一旦ピルの服用を中止します。
コンドームを使用しながら、次の生理が始まったタイミング(生理1日目から)で新しいシートを再開します。
飲み忘れ期間中にコンドームを使用しない性行為があった場合には、アフターピル(緊急避妊ピル)の服用を検討します。
当院でも取り扱いがございますので、すぐにご連絡ください。
ピルの処方の流れ
1.ご来院
ご予約は必要ありません。直接ご来院下さい。
2.診察
医師が問診を行います。既往歴、出産歴、喫煙習慣、血栓症の既往、服用中のお薬などについてお伺いし、血圧測定や必要な検査を行います。
お薬手帳、または服用しているお薬すべてをお持ちください。
3.処方
ピルの飲み方、副作用などをお伝えした上で、処方します。
4.2回目以降の方
大きな副作用がなく継続していけそうな方であれば、2回目以降は待ち時間なし(避妊用ピルのみ)で順次対応させて頂きます。
※保険適応のピルは待ち時間が発生する場合があります。
その後、1年に1回、子宮頸がん検診・超音波検査・血液検査・乳がん検診を受けましょう。
※乳がん検診は当院では行っておりません。希望があれば他の医療機関を紹介させて頂きます。
ピルの種類と費用
避妊用ピル(OC):自費診療・院内処方
※初診料・再診料・処方料込み。
避妊用ピル(OC) | 費用(税込み) |
---|---|
マーベロン28(1相性) | 3,000円 |
ファボワール28(1相性 | 2,500円 |
トリキュラー21・28(3相性) | 3,000円 |
ラベルフィーユ28(3相性) | 2,300円 |
プラノバール | 2,100円
※生理日変更:診察料1,000円+1錠100円×日数分。 |
※ファボワール:マーベロンのジェネリック
※ラベルフィーユ:トリキュラーのジェネリック
治療用ピル(LEP):保険診療・院外処方
※調剤薬局でのおおよその費用、3割負担の場合。
治療用ピル(LEP) | 費用(税込み) |
---|---|
ヤーズ | (1か月)2,600円 (3ヵ月)6,500円 |
ヤーズフレックス | (1か月)3,000円 (3ヵ月)7,700円 |
フリウェルLD | (1か月)1,500円 (3ヵ月)3,200円 |
フリウェルULD | (1か月)1,400円 (3ヵ月)3,000円 |
ドロエチ | (1か月)1,500円 (3ヵ月)3,200円 |
※フリウェル:ルナベルのジェネリック
※ドロエチ:ヤーズのジェネリック